「赤白被せガラス香水瓶」19世紀、フランス、バカラ、高砂コレクションⓇ

 ◇二重、三重の色被せ技術

 19世紀中頃、本格的に香水が流行すると、磁器製より保存や気密性に優れたガラス製の香水瓶が主流となった。ベネチアやボヘミアなど各地のガラス工房も香水瓶の制作を始めたが、特に1746年創業のバカラは、香水の販売も始めたオートクチュールメゾンから絶大な人気を博し、注文が殺到した。

 この作品は、それらメゾンの注文品とは異なるバカラオリジナルの香水瓶で、19世紀中頃に流行した被せガラスによる。透明なガラスに乳白色と赤色のガラスを被せて作ったガラス瓶にカットを施し、内部の香水が見えるようにしている。バカラは、二重、三重の色被せガラスの技術を向上させるだけでなく、瓶底と栓の内部に用いたべネチア伝統の技法「ミルフィオリ(千の花)・グラス」に見られるように、他地域の技法も積極的に取り入れた。20紀初頭にかけてのバカラは、テーブルウエアだけでなく傑作と称えられる香水瓶も多数生み出していたのである。

 特別企画展「ヴェネチア、プラハ、パリ 三都ガラス物語~歴史を駆け抜けた華麗なるガラスの世界~」が開かれている。展示される主な作品を紹介する。

INFORMATION

特別企画展「ヴェネチア、プラハ、パリ 三都ガラス物語~歴史を駆け抜けた華麗なるガラスの世界~」

<会期>2024年1月8日(月)まで。午前10時~午後5時半(入館は同5時まで)。会期中無休
<会場>箱根ガラスの森美術館(神奈川県箱根町仙石原 電話0460・86・3111 https://www.hakone-garasunomori.jp
<入館料>大人1800円、高校・大学生1300円、小・中学生600円
主催:箱根ガラスの森美術館、毎日新聞社
後援:箱根町
協力:箱根DMO(一般財団法人箱根町観光協会)、小田急グループ
特別協力:町田市立博物館、井村美術館、高砂香料工業株式会社
監修:由水常雄(美術史家)

2023年10月28日 毎日新聞・神奈川版 掲載

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