山岡さ希子のインスタレーション

 女性作家が他者として取り扱われがちだった時代が確かにあった。称揚するのも、軽んじるのも根っこは同じだったに違いない。人生を生きる一人の人間としての女性作家に共感を寄せるとき、どんなものが見えてくるのだろうか。

 女性作家に焦点を当てる展覧会を企画してきた元栃木県立美術館学芸員の小勝禮子がキュレーションを務めた。テーマ「女性の生活」を豊かにしているのは、参加作家の年齢が30~70代と幅広いこと。8人の表現は、老いや死も含めた人生の歩みと分かちがたく結びついている。

 仕事や家族、あるいは死についてインタビューする山岡さ希子(1961年生まれ)の映像作品から展示は始まる。インタビューを受けるのは、性別・出自もさまざまな13人。この時点で本展が「女性」を掲げながらも、多様な人に開かれていると分かる。

 グループ展で目にすることが多い、地主麻衣子(84年生まれ)、本間メイ(85年生まれ)、菅実花(88年生まれ)。地主は映像作品を通して家族の墓を巡る話から、地域の墓地、在日イスラム教徒の埋葬へと視野を広げる。本間は性と生殖に関する自己決定権に目を向け、菅は人形から、出産や死を写真によって記念する行為を考察する。

岸かおるの「in her midst」

 一度は創作行為を中断し、再び歩み始めたのが一条美由紀(60年生まれ)と岸かおる(56年生まれ)。一条は言葉も含むドローイングで同世代の女性の心情を表した。岸の「in her midst-彼女の世界」は、家族写真や母が好んだ賛美歌の楽譜を貼り合わせて「脳」を形づくり、周囲を母の日記や家計簿で囲んだ作品。岸は「制作過程は認知症が進む母を理解する過程でもあった」といい、その感情が脳をいとおしく見せているのだろう。

 作家たちはさまざまに枝分かれした道を歩みつつも、参加したことで同年代の作家と連携し、異世代からも刺激を受けることができたと口にしていた。本展は「さいたま国際芸術祭2023」の一環として開催されたが、その意味で芸術祭の全体テーマ「わたしたち」を体現するものだった。さいたま市プラザノース(048・653・9255)ノースギャラリーで22日まで。

2023年10月16日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

シェアする