特別展「陶技始末(とうぎしまつ)―河井寬次郎(かんじろう)の陶芸」が18日から大阪市北区の中之島香雪美術館で始まる。近年の「民藝(みんげい)」ブームで注目が増す河井寬次郎(1890~1966年)。本展の構成や見どころを、同館学芸課長の梶山博史さんに語ってもらった。
未紹介作品豊富に約100点
日々の暮らしを楽しく、豊かに過ごすためのアイテムとして、温かみを感じられる陶磁器や漆器などの「民藝」のうつわが、近年人気を博しています。
河井寬次郎は、「民藝運動」を創始した陶芸家として、注目が増しています。河井は島根県安来(やすぎ)市に生まれ、東京高等工業学校窯業科(現東京工業大学)に入学し、窯業を学びます。1914(大正3)年に京都市陶磁器試験場に入り、技手として勤務していましたが、17(同6)年に辞職して独立、20(同9)年に五条坂の窯を入手して「鐘溪窯(しょうけいよう)」と名付け、以後没するまで京都で活動しました。
初めはさまざまな釉薬(ゆうやく)の技術を駆使して、中国の古い陶磁器をモデルにした「驪龍玩珠花瓶(りりょうがんしゅかびん)」などの作品を発表します。ところが、思想家・柳宗悦(やなぎむねよし)との出会いをきっかけに、柳、陶芸家の富本憲吉、濱田庄司との連名で、26(同15)年に『日本民藝美術館設立趣意書』を刊行します。「草花図盒子(そうかずごうす)」など「用の美」に即した素朴な味わいの作風に大きく転換し、民藝運動の中心的人物として活躍します。戦後は用途をもたない「陶彫(とうちょう)」による造形作品を展開します。
本展のタイトル「陶技始末」は、河井が各地の窯場を訪問した際の実見録などを、民藝運動の機関誌『工藝』に寄稿していた連載のタイトルです。丹波焼(兵庫県丹波篠山市)や、唐津焼(佐賀県唐津市)、上野(あがの)焼(福岡県福智町)の窯などで見聞した技法を採り入れた作品は、河井を民藝運動の作家として特徴付けるものとなりました。
約100点で構成される本展は、第1章において、未紹介の陶芸作品を中心に、河井の創作活動をたどります。第2章では「陶技始末」に記述した各窯場の技術を採り入れた作品を、古い陶磁器との比較を絡めて紹介します。第3章では、河井を支えた関西の収集家6人によるコレクションを特集します。これまでに開催された展覧会とは異なる切り口によって、河井寬次郎の新たな魅力に触れる機会となるでしょう。
特別展「陶技始末―河井寛次郎の陶芸」
会期 6月18日(土)~8月21日(日)。月曜休館(祝日の場合は翌火曜)。入場は10時~16時半(6月23日、7月21日、8月18日は19時まで)
会場 中之島香雪美術館(大阪市北区中之島3、06・6210・3766)
入館料 一般1100円▽大学・高校生700円▽小中学生400円
※前売り(一般のみ)・20人以上の団体は各200円引き。チケットの詳細や販売場所などは美術館公式ホームページ=QRコード=をご覧ください。
主催 公益財団法人香雪美術館、朝日新聞社、毎日新聞社
2022年6月15日 毎日新聞・大阪朝刊 掲載