久保田成子「韓国の墓」が展示された個展会場=大阪市北区の国立国際美術館で7月1日

【この1年】関西の芸術 美術 久保田成子ら女性作家に光

文:清水有香(毎日新聞記者)

ジェンダー

 美術館や文化施設では、臨時休館や会期の見直しなど新型コロナの影響を受けながらも、とりわけ女性アーティストに光を当てた意欲的な展覧会が目立った。

 国立国際美術館(大阪)は、1970~90年代に活躍した久保田成子(しげこ)の仕事を紹介。会場にはジェンダーから自然まで幅広い主題を扱った「ビデオ彫刻」が並び、夫ナムジュン・パイクの陰に隠れがちだった久保田の歩みを鮮やかに描き出した。

 現存作家では京都国立近代美術館のピピロッティ・リスト展が印象的だった。来館者は靴を脱ぎ、寝転んで映像を鑑賞するなど親密で実験的な空間が用意された。コロナ禍で作家が来日できず、全ての展示作業はリモートでの綿密な情報共有により進められた。西宮市大谷記念美術館(兵庫)で開かれた写真家、石内都の個展は代表シリーズに加え、新作を通して作家の現在地を示していた。

 時代をさかのぼり、一人の作家を丁寧に掘り下げた展覧会も見応えがあった。異色の戦争画「國之楯(くにのたて)」で知られる画家、小早川秋聲(しゅうせい)を取り上げた京都府京都文化博物館の回顧展はその好例といえる。戦争の時代を生きた作家の、その前後を見渡す充実の展観だった。向日市文化資料館(京都)では近代京都画壇で活躍しながら忘れられた女性画家、六人部暉峰(むとべきほう)の作品と人生に迫った。

 開催前から話題を集めたのが、大阪府立労働センター(エル・おおさか)を会場にした「表現の不自由展かんさい」。従軍慰安婦を題材にした作品をはじめ、「あいちトリエンナーレ2019」で開かれた企画展の作品などが展示された。妨害行為の恐れを理由に施設の利用承認がいったん取り消されたが、裁判所がその判断を覆す異例の経過をたどった。

 老朽化などに伴い、各地で博物館施設の改修工事が進む中、滋賀県立美術館が6月にリニューアルオープン。同月、大阪中之島美術館が構想から38年の時を経て完成し、「黒い箱」が姿を現した。来年2月の開館が待ち遠しい。

2021年12月22日 毎日新聞・大阪夕刊 掲載

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