
徳川美術館(名古屋市東区)所蔵の国宝「源氏物語絵巻」の修復が完了し、同館で13日から絵巻全15巻が特別公開される。長期保存に向け、額面装だったものを本来の巻子装(かんすそう)に2012年から修復してきた。全15巻が公開されるのは国内で初めて。
源氏物語絵巻は12世紀前半の平安時代の制作とされる。現存するのは同館所蔵の詞書(ことばがき)(説明文)16段・絵15図(巻子装で計15巻)のほか、東京の五島美術館が額面装で詞書4段・絵4図を所蔵している。両館の所蔵品は5年交代で公開し、20年は五島美術館で公開される予定だったが、新型コロナウイルス禍で中止となっていた。
徳川美術館によると、巻子装のほうが空気や光を遮断し、折れの発生などを軽減できるという。修復途中に一部公開したが、今回初めて、匂宮(におうのみや)が夕霧の娘・六君(ろくのきみ)と婚姻した場面を描いた「宿木(やどりぎ)(二)」や「竹河(一)」など5巻が公開される。吉川美穂学芸員は「現代語訳された瀬戸内寂聴さんが他界したのを惜しみながら原点の絵巻物を鑑賞してほしい」と話している。12月12日まで前後期に分けて計15巻を公開。月曜休館。


2021年11月13日 毎日新聞・東京朝刊 掲載