27年ぶりに焼けた柱などと一緒に公開される金堂の焼損壁画。奥左は1号壁「釈迦浄土図」=奈良県斑鳩町の法隆寺収蔵庫で2021年11月9日午後2時50分、大西達也撮影

奈良・法隆寺浄土の世界、再び金堂壁画、27年ぶり公開

文:久保聡(毎日新聞記者)

世界遺産

仏教美術

 世界遺産・法隆寺(奈良県斑鳩町)で、1949年の火災で焼損した金堂壁画(7世紀後半〜8世紀初め、国重要文化財)が10日から限定公開される。将来の一般公開に向けて研究・調査資金を募るため寺などが実施したクラウドファンディングへの寄付者500人が対象。壁画の公開は94年以来27年ぶり。

 金堂壁画は釈迦(しゃか)、阿弥陀(あみだ)、薬師如来の浄土の世界などが大壁(高さ約3・1㍍、幅約2・6㍍)4面、小壁(同、幅約1・5㍍)8面の計12面に描かれている。壁画を襲った49年1月26日の火災は文化財防火デーや文化財保護法制定のきっかけとなった。寺は52年に完成した境内の収蔵庫で壁画を保存。有識者らによる保存活用委員会で将来の一般公開に向けた環境調査などをしてきた。世界遺産登録などを記念して94年11月、火災後初めて約1万人を対象に一般公開されたのを除き原則非公開となっている。

 9日に報道機関向け見学会があった。焼け焦げた柱や壁画が金堂内と同じ配置で保存されている様子が見られる。壁画は極彩色が失われ、一部は高熱でネガフィルムのように白黒が反転しているものの、大きさや図様は1300年を経ても力強さを感じさせる。

 今回の公開は21日まで。収蔵庫への入室は10人を上限とし、30分ごとの入れ替え制。入室時の庫内の温湿度や二酸化炭素濃度を記録し、今後の公開方法などの検討に役立てる。

2021年11月10日 毎日新聞・大阪朝刊 掲載

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