沖縄県立博物館・美術館(那覇市)は21日、沖縄県南城市のサキタリ洞遺跡で、旧石器時代の約2万3000年前の地層から日本最古の着色された装飾品が出土したと発表した。ニシキツノガイの貝製ビーズ(縦約13㍉、幅約8㍉)に赤色顔料が塗られているのが確認された。これまで国内では約1万5000年前以降の縄文時代の遺跡で顔料が塗られた土器や装飾品が見つかっているが、旧石器時代では初めて。旧石器人の文化を考える貴重な手がかりになる。
同館の山崎真治主任学芸員は「世界的にはさらに古い時代の遺跡から顔料が塗られた装飾品や壁画が見つかっている。沖縄にもそうした文化が共通してあったことが明らかになった」と話している。
2009年度から調査が始まったサキタリ洞遺跡では約2万3000~2万年前の地層から、世界最古とされる釣り針などの貝製品(貝器)や貝製ビーズの装飾品が発見され、本土の旧石器人の文化とは異なる「貝の文化」が注目されてきた。今回のニシキツノガイは13年に出土。中の空洞にひもを通してビーズとして使われたとみられ、中央部の表面に赤色顔料が付着していることが分かった。
顔料は酸化鉄を基にしたもので、調査区域では他にも、約2万3500年前の地層から顔料の原材に使用されたとみられる岩石、約1万6000~1万3000年前の地層から顔料の塊が確認され、顔料の使用を裏付けている。
国内では東京都府中市の武蔵台遺跡で、旧石器時代の約3万5000年前に顔料の原材として使われた鉄石英などが確認されていたが、実際に着色されたものは縄文時代以降の遺跡でしか見つかっていなかった。
先史考古学が専門の門脇誠二・名古屋大学博物館講師は「貝探しから着色まで古代の人が手間をかけて作っていたことが想像できる。装飾品は交流の道具として使われた可能性があり、人の歴史を考えるうえでも興味深い」と話している。
2021年10月22日 毎日新聞・東京朝刊 掲載