大正から昭和にかけて活躍した版画家・川瀬巴水(1883~1957年)の回顧展「川瀬巴水 旅と郷愁の風景」をSOMPO美術館(東京都新宿区)で開催中です。初期から晩年までの木版画作品の中から、まとめて見る機会の少ないシリーズ(連作)を中心に厳選した約280点を展観。詩情豊かな版画群の中から、注目作品を同館学芸員の武笠由以子さんが解説します。

注目作品解説

「三十間堀の暮雪」東京十二ヶ月 1920(大正9)年 木版、紙 渡辺木版美術画舗

「三十間堀の暮雪」東京十二ヶ月

 巴水が雪降る銀座の情景を一心に写生し、結実させたのが本作。雪を本物らしく表現するため、空の部分に細かい線を彫ることでふぶく様子を表し、版木の表面を粗く擦ることで、やわらかく積もる雪の印象も伝えている。

「馬込の月」東京二十景 1930(昭和5)年 木版、紙 渡辺木版美術画舗

「馬込の月」東京二十景

 明治以降の文学者や芸術家が多く住んだ場所である馬込に、巴水は洋館づくりの新居を建てた。その年に制作された本作は、自宅近傍にあった三本松を月夜の中に描いたもので、巴水作品の中でも特に人気を博した。

「平泉金色堂」1957(昭和32)年 木版、紙 渡辺木版美術画舗

「平泉金色堂」

 岩手県の中尊寺金色堂を描いた巴水の絶筆。巴水はこれ以前にも夜景の金色堂を描いているが、本作では雪の降る中、歩みゆく一人の僧を描き込んだ。制作当時、病床にあった巴水が自身の姿を描いたとも言われている。

INFORMATION

「川瀬巴水 旅と郷愁の風景」

<会期>
12月26日(日)まで。毎週月曜と11月16日休館。午前10時~午後6時(午後5時半受け付け終了)。会期中展示替えあり
<会場>
SOMPO美術館(東京都新宿区西新宿1、新宿駅下車)
<入館料>
一般1300円、大学生1000円(原則、日時指定入場によるオンライン販売。高校生以下は無料ですが日時指定が必要です)。当日窓口券は空きがある時のみ販売(オンラインとは料金が変わります)。詳しくは同館ホームページ(https://www.sompo-museum.org/)をご覧ください
<問い合わせ>
ハローダイヤル(050・5541・8600)

※新型コロナウイルス感染症対策のため、開催内容は変更する場合があります。

主催 SOMPO美術館、毎日新聞社
協賛 損保ジャパン

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