◇貝片の緻密さ 独自の世界
百合の花の形が特徴的な漆器。掌に収まるほどの大きさで、器一面にヤコウガイの螺鈿(らでん)が用いられている。100ミクロン程まで薄く研ぎ出した貝片の裏面に銀粉で着色後、それらを細かく裁断して器の曲面に沿って貼り付けている。蓋には金属から切り出した6弁の花びらを思わせる平文が華を添え、控えめな色彩の中にも虹色の輝きを放つ、凛とした姿が魅力的な作品だ。
作者の橋本千毅(ちたか)は、漆工芸の修復を通して古い時代の作品を観察、研究することで制作技法を推定し、それらを活用して自らの作品を作る漆芸家である。螺鈿に使用する貝の丹念な製材と色調による細かな分類、器のデザインや装飾文様に合わせた貝片の緻密な敷き詰めに膨大な時間と情熱を込めることで、独自の世界を生み出している。
今回の特別企画展は、自然の色彩やきらめきに挑戦したガラスや螺鈿細工の作品を紹介している。ぜひ展示作品の間近で、見る角度によって変化する色彩のきらめきを体感して頂きたい。

INFORMATION
特別企画展「軌跡のきらめき~神秘の光彩、ガラスと貝細工~」
<会 期>2026年1月12日(月・祝)まで。午前10時~午後5時半(入館は同5時まで)。
<会 場>箱根ガラスの森美術館(箱根町仙石原 電話0460・86・3111 https://www.hakone-garasunomori.jp/)
<入館料>一般1800円、高校・大学生1300円、小・中学生600円
主 催 箱根ガラスの森美術館、毎日新聞社
後 援 箱根町
協 力 箱根DMO(一般財団法人箱根町観光協会)、小田急グループ
特別協力 県立歴史博物館、県立生命の星・地球博物館、町田市立博物館、早稲田大学会津八一記念博物館、高砂香料工業、金子皓彦(国学院大客員教授)、橋本千毅(漆芸家)
2025年11月12日 毎日新聞・神奈川版 掲載