「ミルフィオリ・パテラ形杯」紀元前1~紀元後1世紀、東地中海沿岸域、早稲田大学会津八一記念博物館 小野義一郎コレクション=提供写真

 特別企画展「軌跡のきらめき~神秘の光彩、ガラスと貝細工~」から、主な展示作品を紹介する。

 ◇帝政ローマ期に価値二極化

 外側に張り出した口縁と環状の台座を持つパテラ杯は、器形が膝蓋骨(しつがいこつ、英patella)の形に似ている事からその名がついた、帝政ローマ時代初期によく見られる器である。容器だけでなく、装飾品や照明器具などもガラスで作られた帝政期は、安価なものが普及する一方で、高級品も作られるなど、ガラスの価値が二極化していく。

 高級品を代表する技法がモザイク・グラスである。この作品は、器の所々に風化による虹色の銀化が見られるが、モザイク・グラスの一種であるミルフィオリ・グラスが用いられている。器にたくさんの花が咲いたような様子から、イタリア語で「千の花」を意味するミルフィオリは、色ガラスで断面に文様を作り出したガラス棒を小さく切断して熔融し、器に成形する。紀元前1世紀から発達していったが、複雑な工程が必要となるため、紀元2世紀には消失してしまう。

 19世紀、古代遺跡の発掘によってミルフィオリ・グラスが再発見されると、1871年にヴィンチェンツォ・モレッティがその復元に成功し、華やかな応用作品を制作するようになる。

2025年11月1日 毎日新聞・神奈川版 掲載

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