図❶ 「灰釉兎形壺」クメール、12~13世紀(左) 「黒褐釉兎形壺」クメール、12~13世紀(右)=町田市立博物館蔵

【展覧会】
躍動するアジア陶磁-町田市立博物館所蔵の名品から-
多彩な文化映す135件 12日から

文:後藤修(山口県立萩美術館・浦上記念館学芸専門監)

工芸

 ◆山口県立萩美術館・浦上記念館

 特別展「躍動するアジア陶磁-町田市立博物館所蔵の名品から-」が12日、山口県萩市の山口県立萩美術館・浦上記念館で開幕する。1973年に開館した東京都の町田市立博物館(現在休館中。2029年春に[仮称]町田市立国際工芸美術館として開館予定)は、日本屈指の東南アジア陶磁と、優れた中国陶磁コレクションを所蔵することで知られている。本展では、その中から厳選された中国と東南アジアの陶磁器、合わせて135件を紹介する。展覧会の見どころを後藤修・山口県立萩美術館・浦上記念館学芸専門監に寄稿してもらった。

 東南アジアでは、これまで多くの王朝や民族が盛衰を繰り返し、多様な文化が形成されてきました。東南アジアの陶磁器も主に中国の影響を受けながら、それぞれ多彩な文化を反映した独自の作品が生み出されてきました。本展覧会は、大きく年代順に6章で章立てし、それぞれの章でやきものの技法や彩色表現に注目し、同じ技法でありながら中国陶磁と東南アジア陶磁のそれぞれの地域ごとに生み出されたバリエーションをご覧いただき、ダイナミックに展開するアジア陶磁の世界を楽しんでいただく構成となっています。

 第1章では、「東南アジア陶磁の黎明れいめい」と題して、10世紀以前の中国陶磁と早くから中国陶磁の影響を受けて施釉せゆう陶器を生産したベトナムの陶磁器を紹介します。また、東南アジアでは古くからその風土に適した土器が施釉陶器よりも広範囲で大量に作られており、第1章ではそうした東南アジア独自の土器も紹介します。

 第2章では、現在のカンボジアを中心に栄えたクメール王朝の陶磁器を紹介します。クメール王朝は、9世紀に成立し12世紀にはインドシナ半島の大半を統治した大帝国でした。クメールの陶磁器は、淡い黄緑色の灰釉かいゆうや黒褐釉を施した作品が知られ、中でもインド的な要素を持った形や、動物をユニークにデフォルメした作品=図❶=などはクメール陶器の特徴をよく示しており、今回の展示の大きな見どころの一つとなっています。

図❶ 「灰釉兎形壺」クメール、12~13世紀(左) 「黒褐釉兎形壺」クメール、12~13世紀(右)=町田市立博物館蔵

 第3章では、中国陶磁が最も隆盛した宋時代(10~13世紀)の白磁など、釉薬や器形がもっとも洗練された作品を展示するとともに、そうした中国の洗練された美意識の影響を受けて作られたベトナムの白磁=図❷=や色釉の作品を紹介します。ベトナムでは、11世紀に朝が建国し、ようやく中国の支配から脱した国家づくりが整うようになり、中国の美意識を受けながらも、ベトナム独自のデザインが生み出されています。

図❷ 「白磁 蓮弁文壺」ベトナム、李朝、11~12世紀=町田市立博物館蔵

 第4章では、中国でその技術が最も高度に発達した青磁の作品を展示するとともに、ベトナムの青磁や、クメールから独立したタイの青磁=図❸=など、東南アジアの各地域で生産された独自の青磁を紹介します。

図❸ 「青磁 鳥形水注」タイ、シーサッチャナーライ窯、スコータイ~アユタヤ朝、15世紀=町田市立博物館蔵

 第5章では、鉄を発色剤として利用した黒の釉薬、黒の顔料を施して装飾とした中国と東南アジアの陶磁器を紹介します。鉄の顔料で絵付けをする「鉄絵」の技法は、陶磁器の絵付け表現の中でも古くから行われ、中国を筆頭に東南アジアのベトナム、タイの陶磁器=図❹=に魅力的な作品が知られています。

図❹ 「鉄絵魚文盤」タイ、シーサッチャナーライ窯、スコータイ~アユタヤ朝、15世紀=町田市立博物館蔵

 第6章では、中国の景徳鎮窯で生み出された青のコバルト顔料で絵付けをした青花せいか磁器の優品を展示するとともに、その影響を受けて作られたベトナム青花の逸品=図❺、❻=や、ミャンマーで独自に発達した銅の発色による緑の絵付けを施した作品=図❼=を紹介します。また中国の五彩ごさい磁器やベトナムの五彩なども併せて展示し、中国と東南アジアで最も多彩で優美な彩色表現が花開いた時代の陶磁器を紹介します。

 この夏、当館にて、地域ごとに躍動感あふれる造形を展開したアジア陶磁をお楽しみいただければ幸いです。

図❺ 「青花牡丹文盤」ベトナム、黎朝、15世紀図=町田市立博物館蔵
図❻ 「青花象形水注」ベトナム、黎朝、15~16世紀=町田市立博物館蔵
図❼ 「白釉緑彩鳥文盤」ミャンマー、ペグー~タウングー朝、15~16世紀=町田市立博物館蔵

INFORMATION

特別展「躍動するアジア陶磁―町田市立博物館所蔵の名品から―」

■会期  7月12日(土)~9月23日(火・祝)開館時間は、午前9時~午後5時(入場は午後4時半まで) ※休館日=7月14日(月)、22日(火)、28日(月)、8月12日(火)、18日(月)、25日(月)、9月8日(月)、16日(火)
■会場  山口県立萩美術館・浦上記念館(山口県萩市平安古町586の1、0838・24・2400)
■観覧料 一般1200円(1000円)▽学生・70歳以上1000円(800円)▽18歳以下無料
※かっこ内は前売りおよび20人以上の団体料金。
※開催中のコレクション展もご覧いただけます。
■関連イベント
★記念講演会
「色と形でみる、アジア陶磁器の躍動する歴史!」7月12日(土)午後1時半~午後3時。講師は新井崇之・町田市立博物館学芸員。聴講無料、事前申し込み不要。
★ギャラリー・ツアー
毎週日曜日の午前11時~正午。担当学芸員による作品解説。無料だが観覧券が必要。

主催   躍動するアジア陶磁展実行委員会(山口県立萩美術館・浦上記念館、毎日新聞社、tysテレビ山口)
後援   山口県教育委員会、萩市、萩市教育委員会
協力   町田市立博物館
特別協力 エフエム山口
企画協力 AsHI

2025年7月11日 毎日新聞・西部朝刊 掲載

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