朝鮮半島で6~7世紀に制作された如来および両脇侍立像=東京国立博物館で高島博之撮影

 ◇似ていて異なる造形の魅力

 今年の日韓国交正常化60周年を記念して、東京国立博物館(東博)の東洋館で、古代から朝鮮王朝時代までの韓国の歴史、文化に焦点を当てた「てくてくコリア-韓国文化のさんぽみち-」が開催されている。東洋館の三つの展示室を使った大規模な展覧会。日本と似ているようで違う、違うようで似ている作品の数々が並ぶ。11月16日まで。

 展示は三つの特集に分かれている。特集「日本にもたらされた朝鮮半島の文化」は、6~17世紀ごろの代表的な作品計11点(一部は展示替え)を紹介。1点は国宝で、5点が重要文化財に指定されている。
 日本に朝鮮半島の百済から仏教が伝来したのは6世紀のことだった。重要文化財「如来および両脇侍立像」は、その時代に朝鮮半島で制作されたとみられる。約28㌢の中央の仏像は丸みを帯びたほほで、穏やかな印象を受ける。

 この仏像を含む5点は、明治期の廃仏毀釈(きしゃく)運動による散逸を逃れるため、法隆寺(奈良県斑鳩町)が皇室に献納し、戦後に国に移管された「法隆寺献納宝物」の一部。今回の展覧会のため、約300件の献納宝物の中から厳選した。

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 仏高級ブランド、ルイ・ヴィトンのトランクと見間違えそうなのは、13世紀の高麗で作られた経典を入れる木製の箱「菊花螺鈿経箱(きくからでんきょうばこ)」(重要文化財、幅約37㌢、奥行き約19㌢、高さ約26㌢)だ。螺鈿とは貝殻の内側の真珠層を削り取り、漆を塗った木製品などに貼り付けた装飾。菊花文の花びらと葉は螺鈿で、花の芯にはウミガメの一種タイマイの甲羅を用い、茎は細い銀線の象眼だ。当時、高麗の螺鈿の細密さは中国でも評判だったが、現存するものは少ない。本作は山口県の大寧寺にあったものが、大名の毛利家に伝わった。

13世紀に朝鮮半島で制作された菊花螺鈿経箱=東京国立博物館で高島博之撮影

 特集「朝鮮時代の書画と交流」では、14世紀末から約500年に及んだ朝鮮王朝時代の書や絵画、調度品などを展示。書斎と応接間を兼ねた男性の部屋を再現した展示は、文机や本棚、すずりなどを置き、時代劇のワンシーンのようだ。

 「韓国タイムトラベル-ここで・ひと・とき-」の特集は、古代から朝鮮王朝時代までの考古、美術、民族作品を展示する。王朝の儀式から庶民の日常生活にいたるまでを網羅的に紹介している。パッチワークの布「チョガッポ」や、女性の民族衣装、チマ・チョゴリがひときわ鮮やかな色彩を振りまいていた。

パッチワークが施された布「チョガッポ」=東京国立博物館で高島博之撮影

 東博の猪熊兼樹室長は「展示から、日本人が受け入れた韓国の文化と、韓国の文化の独自性のそれぞれを感じてもらえると思う」と話している。

2025年10月23日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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