東京都多摩市の都立桜ケ丘公園に、昭和初期の近代建築が残る。1930(昭和5)年に完成した旧多摩聖蹟(せいせき)記念館だ。かつて近郊に明治天皇が訪れたのを記念して建てられた。天皇が訪れた場所はかつて「聖蹟」と呼ばれていた。
鉄筋コンクリート造りで、外観は円柱が並ぶ古代ギリシャやローマの神殿を思わせる。北側正面から眺めると、梁(はり)付きの太い円柱と波紋のように広がる外階段の先に展示部があり、屋根などを縁取るスペイン瓦がアクセントになっている。
建物は柔らかい曲線を描く楕円(だえん)の形状で美術的に優れ、かつデザイン性にも富む。中央ホールの中心にはブロンズの明治天皇騎馬像が鎮座する。ここでも円柱がその周囲を囲むように配置され、荘厳さを醸しており、その上に一回り小さい楕円の天井がある。像の台座からの天井高は、約8・5㍍にもなる。

館内では優雅な雰囲気を味わいながら喫茶も楽しめるなど、来場者の憩いの場となっている。

2025年9月21日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載