近づくとまず、その重厚感に圧倒される。よく見ると、建物上部の軒蛇腹がスクラッチタイルで覆われた外観に変化をつけている。角はすべて丸みを帯びており、アールデコ調の半円筒状の塔屋と相まって、柔らかな印象を与える。
旧九州帝国大学工学部本館(福岡市東区)は1930(昭和5)年に建てられた。構造設計は同大建築課長の倉田謙が、意匠は技師の小原節三がそれぞれ担った。
関東大震災後に主流となった鉄筋コンクリート技術をいち早く取り入れている。当時としては耐震強度が高く、さらにスクラッチタイルで耐火性をも突き詰めた。学内だけでなく、福岡のシンボルとなる建築物となっている。
玄関ポーチのひさしには円形のステンドグラスがはめ込まれ、赤色や緑色の光が差し込む。玄関の欄間には、植物をかたどったステンドグラスも飾られている。

4階の会議室の壁面は巨大な油絵で彩られ、しゃれた家具やじゅうたんは建築当時のままとなっている。2023年、国の登録有形文化財となった。

2025年5月18日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載