世田谷美術館の開館40周年記念展「世田美のあしあと-暮らしと美術のあいだで」から プロローグ「開館前夜」の展示。北大路魯山人作の陶器群が見られる=小松やしほ撮影

 世田谷美術館(東京都世田谷区)は30日、開館40年を迎える。収蔵作品は国内外の近現代美術を中心に、約1万8000点に上る。開催中の記念展「世田美のあしあと-暮らしと美術のあいだで」は、そのコレクションの中から厳選した約230点で、40年の歩みを振り返る。

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 世田美の基本構想が固まったのは1982年。区民生活に密着▽教育的役割を重視▽美術文化の交流の場▽太陽と緑に包まれた都市空間の中の美術館--を基本コンセプトに開設準備が始まった。作品収集が始まったのも82年。そのころ収蔵されたデイヴィッド・ナッシュの木の作品と、開館前に寄贈された北大路魯山人作の陶磁器群を紹介するプロローグ「開館前夜」から本展は始まる。

 世田美の収蔵作品には大きく二つの特徴がある。一つは世田谷にゆかりのある作家。もう一つは、アンリ・ルソーらに代表される独学で創作にいそしんだ「素朴派」と呼ばれる作家たちだ。

 6章構成の第1章では、ルソーの「サン=ニコラ河岸から見たシテ島(夕暮れ)」(1887~88年ごろ)や「フリュマンス・ビッシュの肖像」(93年ごろ)など、1986年の開館記念企画展「芸術と素朴」に出品された作品をはじめ、93年の「パラレル・ヴィジョン 20世紀美術とアウトサイダー・アート展」、95年「インサイド・ストーリー-同時代のアフリカ美術」の出品作家による作品を紹介する。

世田谷美術館の開館40周年記念展「世田美のあしあと-暮らしと美術のあいだで」から 第1章「『開館記念展芸術と素朴』にはじまる」の展示風景=小松やしほ撮影

 また、世田美は「暮らしと美術」に着目し、作品収集や展覧会を行ってきた。4章の「生活によりそう」では、志村ふくみさんの紬(つむぎ)織や富本憲吉の磁器、濱田庄司の陶器といった工芸作品を展示。生活雑誌『暮しの手帖』の編集長を長く務め、庶民の暮らしや社会のあり方に鋭い視線を注いだ花森安治の関係資料も紹介する。

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 世田谷には美術に限らず、音楽、演劇、映画などさまざまな分野の文化人が暮らしていた。区内に在住した人の中には、麻生三郎、山口薫、難波田龍起ら日本の美術界を主導してきた人物も少なくなく、世田美では定期的に回顧展を開いたり、区内を走る鉄道とその沿線に住む作家を特集したシリーズ展「美術家たちの沿線物語」を開催したりしてきた。5章「世田谷のアトリエから」では、過去に個展を開いた作家を中心に「世田谷で生まれた」作品に注目する。収蔵作品を生かした本展は、世田谷という地域に根ざし、地道に歴史を重ねてきた美術館の姿勢を感じさせる。

 橋本善八館長は「打ち上げ花火のような周年記念展ではなく、流れをつくってしっかりとコレクションを見ていただこうという企画。それが40年間の支援へのお礼としてふさわしいと思った」と話した。4月12日まで。

2026年3月11日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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