「荷役中」2016年 ©Seitaro Kuroda

 ◇20日開幕 北九州市立美術館

 画家、イラストレーターとして86歳となった今も活躍を続ける黒田征太郎さんの初の大規模個展「黒田征太郎展 絵でできること」が20日、北九州市立美術館(本館)で開幕する。1969年に故・長友啓典(けいすけ)さんとデザイン事務所K2を設立し、数多くのポスターなどを手掛け、高い評価を得た。以来、戦争、反核をテーマにした創作やライブペインティングなど旺盛な活動を続け、これまでに描いた作品は20万点を超える。本展ではその膨大な作品群から厳選した絵画、ポスター、絵本原画などを展覧する。本展の見どころ、「無頼」「反骨」と評される人間・黒田征太郎の魅力について、同館の河村朱音・学芸員に寄稿してもらった。

86歳になった今も旺盛な活動を続ける黒田征太郎さん

 ◇独創性に富む作品群から厳選

 壁に描かれた伸びやかな黒い線と軽快な色の花や鳥。北九州市内だけでも、空港や商業施設、病院など身近なところで目にしている方は多くいらっしゃるかと思います。

 これらを描いたのは、イラストレーターや画家として国内外で活躍する黒田征太郎さんです。ヨーロッパやアジアはもとより、アメリカのニューヨークにアトリエを構えたこともあり、現在は北九州市門司区の海沿いにある建物を拠点としています。その外壁にも、海に浮かぶ船や色鮮やかな動植物が描かれ、ちょっとした名所にもなっています。

 今年86歳を迎えた黒田さんは、1939年、大阪の生まれです。幼い頃に神戸大空襲で被災し、滋賀県へ疎開を経験、終戦からほどなくして、手塚治虫の冒険漫画『新宝島』との出会いに大きな影響を受けました。芽生えた冒険心は自作漫画の投稿にとどまらず、10代で世界を航行する船員となります。船には米軍の置き土産の雑誌があり、そこから絵に興味を持ち、大阪に戻るとデザイン事務所に勤務。そこで盟友となる長友啓典さんと出会い、意気投合したふたりは、69年にデザイン事務所K2を設立しました。

 ポスターやファッション誌の表紙などを手掛け、受賞を重ねながら、K2は一気に時代を代表するデザイン事務所へと成長。黒田さんはイラストレーターとしての地位を築くことになりました。

 一方で、ずっと戦争の題材から距離を置いていた黒田さんですが、50代半ばとなった94年、ニューヨークの書店で見つけた故・野坂昭如(あきゆき)さんの著作本『戦争童話集』が転機となります。『火垂(ほた)るの墓』の著者でも知られる野坂さんを長年、兄のように慕っていた黒田さんは、約20年前に刊行されたこの童話集の絵本と映像化に取り組むことを決めます。そして「戦争童話集~忘れてはイケナイ物語り~」プロジェクトのほか、「ピカドン・プロジェクト」を立ち上げ、国内外で壁画制作のイベントや展覧会の開催、音楽と共に全身で表現するライブペインティングを通して、絵による命の大切さ、尊さを伝えるようになりました。

戦争童話集「年老いた雌狼と女の子の話」1995年 ©Seitaro Kuroda
「PIKADON」2006年 ©Seitaro Kuroda

 これまでに制作された作品は20万点を超え、現在もその手は止まることなく、門司で生み出された作品も数多くあります。本展は、絵を通して黒田さんがこれまで伝えてきたこと、そしてこれから伝えたいことが詰まった、初めての大規模展となります。独創性に富み、自由に生きることへの肯定的なエネルギーに満ちた会場へ、ぜひお越しいただきたいと思います。

「ワタリガラス」1990年 ©Seitaro Kuroda

イベント

黒田征太郎ギャラリートーク
20日(土)午後1時~(約30分)
展覧会場内
※申し込み不要、本展観覧料が必要。

太鼓芸能集団「鼓童」中込健太×黒田征太郎
太鼓パフォーマンスと黒田さんのドローイング
20日(土)午後2時~(約30分)
エントランスホール
※入場無料、申し込み不要。

黒田征太郎サイン会①
20日(土)午後2時45分
エントランスホール

沢木耕太郎×黒田征太郎
対話「ふたり 錨(いかり)のない船を漕(こ)ぐ」
11月1日(土)午後2時~(約90分)
アネックス3階レクチャールーム
定員80人。参加申し込みは美術館ホームページからか、往復はがきで。往復はがきは1組2人まで。応募締め切り9月30日(火)。応募多数の場合は抽選。詳細はホームページで。

黒田征太郎サイン会②
11月1日(土)沢木さんとの対談終了後
エントランスホール

映像作品の上映2本立て
・「アトムの血」
・BS朝日「SWITCH TV 黒田征太郎」
10、11月の毎週土日 午前10時~▽午後2時~(約90分)
エデュケーションルームA
 ※視聴無料、途中退席可能。

 ※サイン会は当日ミュージアムショップで本展関連書籍を購入した人(先着100人)が対象。

INFORMATION

黒田征太郎展 絵でできること

会期   9月20日(土)~11月9日(日)
     ※月曜休館(ただし月曜が祝日の場合は開館し、翌火曜が休館)
会場   北九州市立美術館(本館)
     戸畑区西鞘ケ谷町21の1、093・882・7777
観覧料  一般1600円(1300円)、高大生1100円(800円)、小中生900円(600円)
     ※かっこ内は前売りおよび20人以上の団体料金
主催   黒田征太郎展実行委員会(北九州市立美術館、毎日新聞社)
後援   九州旅客鉄道、西日本鉄道、北九州モノレール、筑豊電気鉄道
監修   新井敏記(スイッチ・パブリッシング)
企画協力 クレヴィス
協賛   瞬報社
協力   東京工科大学デザイン学部・日本工学院デザインカレッジ

2025年9月19日 毎日新聞・西部朝刊 掲載

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