パブロ・ピカソ「海辺の母子像」1902年、油彩/カンバス、ポーラ美術館

ピカソの絵に新発見
「海辺の母子像」下3層に子供や男性を描く

文:平林由梨(毎日新聞記者)

コレクション

西洋美術

 画家、パブロ・ピカソ(1881~1973年)が20歳の時に描いた油彩画「海辺の母子像」(縦81.7センチ、横59.8センチ)の下に男性像や子どもの絵が描かれていることが判明した。また、絵の表面に絵を包んだ新聞紙のインキが付着していることも新たに判明。作品を所蔵するポーラ美術館(神奈川県)が調査し、30日に東京都内で発表した。

「海辺の母子像」(部分)の赤外線反射イメージング分光法による画像。女性の顔部分などに新聞の文字が写っているのが分かる©John Delaney, National Gallery of Art, Washington,2018

 ピカソが生死や貧困などのテーマを深い青で表していた「青の時代」の作品。これまでの研究で、表面を含めて4層構造であること、下に女性像があることなどが分かっていた。今回は、最下層に白い服を着た子ども、その上に女性像、さらにその上に男性とビールジョッキが描かれていることが明らかになった。ポーラ美術館の今井敬子学芸課長は「表面の絵の具は薄塗りだが、ごつごつして重厚に見えるのは下に何層も絵が存在するから。ピカソは下に描いた形や質感、色彩などをリソース(資源)として重層的な絵画に生かした。その制作プロセスが分かる」と評する。

 また、これまでは絵の下に新聞紙が貼られているとみられていたが、そうではなく、絵を包んでいた新聞紙のインキが絵に付着していたことが分かった。ピカソは表面に付いた新聞の文字をあえて修正せずに知人に贈ったとみられる。今井課長は「それ(青の時代)以降のキュビスムの作品には文字のコラージュが頻出するが、それよりも前に文字が作品に存在することを認めていた」と分析した。

 「海辺の母子像」は9月17日からポーラ美術館で、2023年2月4日からひろしま美術館で展示予定。

2022年6月30日 毎日新聞・ニュースサイト 掲載

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