講義室に柔らかな反射光を入れるルーバー

 緑豊かな大学への道を上って行くと、高架橋のような巨大建造物が出現する。愛知県立芸術大学講義棟(同県長久手市)は同大設立時の1966(昭和41)年に、当時、東京芸大教授だった建築家、吉村順三の設計で建てられた。キャンパスの中央に建つ姿は圧倒的な存在感だ。

 高さ約10メートル、全長約110メートルの講義棟は、鉄筋コンクリート造りの3階建て。東西の両側には白い羽のような縦ルーバー(格子)が並び、直射光を遮り、柔らかい光を室内に取り入れる。十字形の柱が3階の講義室を持ち上げているような構造だ。1階のピロティが開放的な空間を演出し、2階のガラス張りの渡り廊下が浮遊しているように感じさせる。

2階天井に内外の境目なく施工されたラワン材の板張り

 2016(平成28)年3月に完了した耐震工事では、外観を損なわないように目立たない位置に格子状の鉄骨フレームで補強した。同大施設整備委員長の水津功教授は「講義棟は大学のアイデンティティーそのもので、学生たちに創造的な刺激を放っている。その価値を損なわないようにしたい」と話す。

建物の南北両面には日本画家、片岡球子の壁画がある

2022年2月13日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

シェアする