「花器」1902~03年頃、ボヘミア、レッツ工房、町田市立博物館蔵

 ◇金属含む溶液使い焼成

 この作品は、上部が花びらのように形成され、花弁には葉が巻き付けてあり、まるで植物のような形の花器である。植物や貝など自然物のモチーフを応用するアール・ヌーボーの流行を反映している。

 19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパを中心に開花したアール・ヌーボー。ボヘミア各地のガラス工房は、それまでの歴史の中で培ってきたカットやエングレービング、絵付けの技術などを活かし、柔軟に時代の要望に応えるガラス作品を制作した。

 なかでも金属のような、または真珠のような美しい虹色の光沢を見せるラスター彩は、人々の注目を集め、ボヘミアのアール・ヌーボーのガラスを代表する技法となった。

 ラスター彩とは、銀や錫といった金属を含む溶液をガラス表面に塗布し高温で焼き付けて制作する技法で、7~8世紀に発明されたと考えられている。

 この作品を制作したレッツ工房は、ラスター彩の研究、開発を進め、1898年に特許を取得。「パピヨン」(蝶の意)や「フェノメーン」(現象の意)と名付けた工房独自のラスター彩による装飾ガラス器を販売し人気を博した。

2025年9月1日 毎日新聞・神奈川版 掲載

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