趣深い談話室。家具調度品の数々も建設当時の面影を残す=尾籠章裕撮影

 飛鳥山公園(東京都北区)内を歩くと、自然とほどよく調和した建物がたたずむ。「晩香廬ばんこうろ」だ。

木立をのぞむ落ち着いた外観=尾籠章裕撮影

 日本資本主義の父、渋沢栄一の喜寿(77歳)を祝い、清水組(現清水建設)が贈った洋風茶室。1917(大正6)年に完成した。「廬」は「いおり」を意味する。数寄屋造りを取り入れ、和洋折衷の様式で人々を魅了している。

 木造平屋建て。茶室には談話室があり、洗練された意匠とこだわりの家具調度品が異彩を放っている。照明は長寿を表す「鶴」などの細工が施され、暖炉上部のタイル飾りには「壽(寿)」の文字が描かれている。しっくいの天井には、ブドウを食べるリスや飛び立とうとするハトの愛くるしい姿が見られる。遊び心を感じさせ見ていて心が和む。

美しいしっくいの天井の装飾=尾籠章裕撮影

 栄一は国内外の多くの賓客をもてなし、紅茶やサイダー、お菓子なども楽しんだという。窓から注ぐやわらかな日差しが室内を満たすと、大正期の静かな時間に包まれているように感じた(内部公開は現在休止中)。

2025年8月17日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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