友沢こたお「Slime CCXVI」(2025年)=小松やしほ撮影

 ◇魂の昇華、絶望 思索重ね

 今年、生誕100年を迎えた三島由紀夫(1925~70年)の作品をテーマにしたグループ展「永劫えいごう回帰に横たわる虚無 三島由紀夫生誕100年=昭和100年」が東京・表参道のGYRE GALLERYで開催されている。国内外の現代美術作家らが『豊饒ほうじょうの海』『仮面の告白』などをテーマに、三島の世界観を描き出す。

 紹介するのは中西夏之さん、ジェフ・ウォールさん、杉本博司さんら8人の作品。2016年に亡くなった中西さんの作品以外は、本展のため新たに制作された。

 最初の展示は森万里子さんの「ユニティ」シリーズ。『豊饒の海』第1巻『春の雪』を題材とした3枚の絵画は仏画をほうふつとさせる。金色を基調とした円形の画面に輝く光の輪。主人公・清顕と聡子が出会い、恋心が芽生えた瞬間、二人の魂がどう変化していったのかを表現した。

 スライムを自らの顔にかけた自画像などで知られる友沢こたおさんは『仮面の告白』をモチーフにした。主人公が片思いの男性を思い浮かべながら海辺で果てる場面に「すごい絶望」を感じたという。「臓器に響くような感じがして」本を開くことすらつらかったが、何度もそのシーンを読み込んだ。悩んで悩んで重ねた背景の暗い青色は、果てしない絶望を象徴する。

 芥川賞作家の平野啓一郎さんは当初、文章のみ寄せる予定だったが、キリストの殉教図などから着想を得て、自著『三島由紀夫論』に鉄の棒を刺した作品を制作した。三島全集の重みに彼の肉体の重さを感じ、「文学だけでは不十分だったのか」という問いを三島に投げかける。

平野啓一郎「三島由紀夫論」(2025年)=小松やしほ撮影

 作家それぞれの思索に満ちた三島の世界に、見る側も深く引き込まれる。企画したキュレーターの飯田高誉さんは「三島由紀夫という存在を、次世代の若い人たちが知って、その活動を理解するきっかけになれば」と話した。9月25日まで。

2025年7月28日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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