花頭窓のデザインを取り入れたガラス戸に差し込む外光=金澤稔撮影

 佐賀県唐津市は江戸時代後期から、石炭の積み出し港として栄えた。現在も、その隆盛を感じさせる近代建築物が点在する。「肥前の炭鉱王」と呼ばれた高取伊好これよしの邸宅「旧高取邸」もそのひとつ。純和風の建築物に洋間を備え、1904(明治37)年に大広間棟が建てられた。

 大玄関を入って右側は迎賓館の役割を持つ大広間棟に、左側は18(大正7)年に増築された居室棟になっている。

 邸内各所には杉板の戸に描かれた「杉戸絵」が72枚あり、中国の故事や花鳥風月を題材にしている。京都の絵師、水野香圃こうほに描かせた。他にも、花頭窓のデザインを取り入れたガラス戸や、オシドリやクジャクの親子などを型抜きや浮き彫りにした欄間など、伊好の知識や教養がセンスよく意匠化されている。

 驚くのは大広間。畳を上げ敷居を外すことで、本舞台、橋懸かり、後座あとざ地謡座じうたいざを備えた能舞台ができあがる。伊好自身が能の稽古けいこをしたほか、演者を招き鑑賞の宴を催した。

畳を上げると能舞台になる大広間=金澤稔撮影

 98年に国の重要文化財に指定された。

旧高取邸の来賓用玄関。他に家族用、使用人用の玄関がある=金澤稔撮影

2025年7月20日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

シェアする