江康泉さん、李国威さん、崔嘉曦さん共同監督のアニメーション「離騒幻覚」シリーズの一場面=金沢21世紀美術館で(上村里花撮影)

 香港とロンドンを拠点に活動するアーティスト、江康泉(ゴン・ホンチュン)さん(1977年生まれ)の日本初の美術館での展覧会「江康泉 電気心音」が金沢21世紀美術館(金沢市)で開かれている。代表作のアニメーション「離騒幻覚(りそうげんかく)」シリーズのほか、ドローイングや絵コンテ、彫刻などが館内3カ所で上映・展示されている。

 江さんは2000年代初頭に漫画家としてデビュー。その後、造形やアニメーション監督など活動の場を広げてきた。東洋の古典文学や思想、歴史的モチーフを、都市と個人の記憶、アイデンティティーなどのテーマに結びつけた作品を展開。22年には米サンフランシスコのアジア美術館で大規模な個展を開催し、注目を集めた。

 「離騒幻覚」シリーズは、古代中国の史実や伝説を基に人間とアンドロイドが共存する未来社会を描き出し、個人の記憶や自由意思、人間とは何かといった根源的な問いを投げかける。

 物語の舞台は、秦の始皇帝が不老不死を手に入れ、未来に至るまで絶対的な統治を築き、人間とアンドロイド、サイボーグが共存する世界。人々は、不老不死を手に入れた代わりに、個人の体と意識は政府によって監視・管理されている。それを拒む人間は「祭司」として、システム外で活動する。主人公の「祖(ゾー)」は、古代中国の詩人・屈原の記憶と人格を複製されたアンドロイド。祖が過去と現在、現実と虚構の境を行き来する中で見たものとは--。

 江さんは「アニメ制作は日本からインスピレーションを得てきました。西洋とは違う『アジアフューチャリズム』を感じます」と語る。大友克洋さんの『AKIRA』や浦沢直樹さんの『20世紀少年』などから大きな影響を受けたという。館内の長期インスタレーションルームでは、香港のタクシーの扉に登場人物のドローイングと屈原作とされる詩の一部を重ねた作品や絵コンテのほか、仏教説話をテーマとした新作「未来本生譚(ほんしょうたん)」シリーズ、短編映像作品群などを展示している。来年3月22日まで。

2025年12月15日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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