「ラムセス大王展 ファラオたちの黄金」で展示されているラムセス2世のひつぎ=東京都江東区のCREVIA BASE Tokyoで高島博之撮影

 古代エジプトの少年王、ツタンカーメンの墓が発見されて100年あまり。1日にはギザの三大ピラミッドの近くに大エジプト博物館が全面開館し、世界的な注目が高まる中、日本各地でも展覧会が続々開かれている。なぜ日本人は古代エジプトにひかれるのだろう。展覧会を見学し、専門家らに話を聞いた。

 コブラをあしらった頭飾(とうしょく)をかぶり、顎(あご)には付けひげ、胸の前で手を交差させている--。

 東京都江東区のCREVIA BASE Tokyoで開催されている「ラムセス大王展 ファラオたちの黄金」の目玉展示、ラムセス2世のひつぎだ。横に寝かせて展示することが一般的だが、ここでは立てた状態にしており、360度ぐるっと見学できる。

 そもそも古代エジプトの「古代」とは、ナイル川流域に統一国家が誕生した紀元前3000年ごろから約3000年間の時代を指す。ラムセス2世は、紀元前1279年ごろ~同1213年ごろに在位した王(ファラオ)。岩山を掘った巨大なアブシンベル神殿を造ったことで知られる。

 3月に開幕後、約半年で30万人以上が来場。閉幕予定はもともと9月だったが、人気の高まりを受けて来年1月4日まで会期が延長された。

 会場には、金や宝石をあしらった首飾りなどの装飾品、金箔(きんぱく)を施したマスクなど、「これぞ古代エジプト」と思わせる品々が並び、約180点の展示品はすべて撮影可能。VR(仮想現実)でアブシンベル神殿の内部を体験できるなど、最先端の技術を用いた体験型の展示が充実している。

 地方でも、エジプトがテーマの展覧会は花盛りだ。広島県立美術館で「古代エジプト」(11月30日まで)、青森県の八戸市美術館で「古代エジプト美術館展」(12月15日まで)が開かれている。

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 日本で初めに「エジプトブーム」が巻き起こったのは今からさかのぼること60年、1965年のことだ。

 黄金マスクなどを展示した「ツタンカーメン展」が東京、京都、福岡を巡回し、約290万人が詰めかけた。以降、古代エジプトのコレクションを紹介する大規模な展覧会は、数年に1度開催されてきた。

 これほど古代エジプトにひかれる人が多いのはなぜなのだろうか。

 冒頭の「ラムセス大王展」を主催する「NEON(ニオン)」のマーケティングマネジャー、後藤彩さんは「子供の頃から社会科で学ぶ機会があるほか、ピラミッドなどのミステリアスな部分がテレビ番組などでエンタメ的にたびたび取り上げられ、親しみを持っている人が多いからではないか」とみる。また「金などを使った精巧な装飾品の素晴らしさにひかれる部分もあると思います」と話す。

 日本人の「古代エジプト」好きについて少し異なる視点をもたらしてくれるのが、古代オリエント博物館(東京都豊島区)で開催中の展覧会「やっぱりエジプトが好き♥ 昭和のニッポンと古代のエジプト」(11月24日まで)だ。

 同展は、日本で昭和30、40年代、古代エジプトの王や神などの図像、文字のヒエログリフをモチーフにした「エジプト柄」を取り入れた日用品が増えたことに着目。ブラウスやスカートなどの布地に、コーヒーカップをはじめとした陶磁器、栓抜きや伝統工芸の鎌倉彫--。エジプト柄を取り入れたものを幅広く展示している。多くは、北名古屋市歴史民俗資料館の収蔵品で、いずれもエキゾチックでおしゃれな雰囲気を醸し出している。

古代エジプトの図像を取り入れた、昭和40年代のカップとソーサー=東京都豊島区の古代オリエント博物館で高島博之撮影

 エジプト学の専門で古代オリエント博物館の田沢恵子研究部長は「ここに集まった資料は、エジプトの歴史や宗教を深く知って作られたものばかりではありません。ただ、そういったことを意識しないくらい日本での日常生活にエジプト柄が入り込んでいることがよく分かります」と話す。

 田沢さんは別の中東地域の専門家から、古代エジプトの壁画などには「色がある」と指摘され、はっとしたという。数千年の年月を経て退色しているものも多いが、色彩が美しく残っているものもあり「見ていて楽しい」とも言われた。

 各展覧会の見どころは「実物を見てもらいたい。さらに最新技術を使った場所では展示ケースでは分からないことも体験できる」と田沢さん。「その上で古代オリエント博物館の展覧会も見てもらえれば、さらに楽しめると思います」とアピールした。

古代エジプトの王、アメンエムオペトのひつぎから見つかった金箔を施した木製のマスク=東京都江東区のCREVIA BASE Tokyoで高島博之撮影

2025年11月10日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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