建物内観。末広がりの低層部は柱のない広大な空間をもたらす=尾籠章裕撮影

 「絶景」とは大自然だけではなく、都会にも存在している。河原町団地(川崎市幸区)の4号棟を見ると、そんな思いを抱く。14階建てで逆Y字形の外観は、他にない個性を感じさせる。

逆Y字の構造を持つ建物外観=尾籠章裕撮影

 手がけたのは建築家、大谷幸夫。大谷は丹下健三に師事。日本初の国立会議施設、国立京都国際会館も世に送り出した。4号棟は1974(昭和49)年に完成した。逆Y字形はほかに6、8号棟がある。

独特の構造の4号棟の低層部=尾籠章裕撮影

 逆Y字によるせり出した形状は、低層階に日照の確保をもたらし、日差しは5階まで階段状に広がる。内部は半戸外の吹き抜け空間となり、「広場」のような開放感がある。許可を得て中に入ると、外観の印象とは異なる世界が広がっていた。見上げると東西に渡した大きなはりがあり、心地よい風が通り抜けた。

 「撮影ですか」と声をかけてくれた女性に話を聞くと、「祖母が団地に40年来住んでいます」という。人生に寄り添う建築の重みを改めて感じた。

2025年12月21日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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