国宝「孔雀明王像」 中国・北宋時代(11~12世紀) 京都・仁和寺蔵(前期展示)=提供写真

 ◇京都国立博物館で20日から

 特別展「宋元仏画-蒼海うみを越えたほとけたち」が20日、京都国立博物館(京都市東山区)で開幕する。中国の宋と元の時代に描かれ、日本に伝わって大切に守り伝えられてきた仏画を中心に170件を展示。そのおよそ半数が国宝や重要文化財に指定された名品で、人々の信仰や美への思いを現代に伝える。東アジア最高峰とたたえられる仏画の世界に迫る本展の見どころを紹介する。

重要文化財「牡丹図」 中国・元時代(14世紀) 京都・知恩院蔵(前期展示)=提供写真

 「宋元」という言葉は本来、中国の王朝である「宋」と「元」のこと。その時代の仏画と聞くと日本と関係は薄そうだが、実は中世以来、信仰や文化の中で重要な役割を果たしてきた。

 平安時代から南北朝時代にあたる宋と元の時代、多くの日本人僧侶が仏法を求めて中国に渡り、入手した数々の文物を持ち帰った。その素晴らしさは室町時代、特に足利将軍家によって価値を引き上げられ、両王朝が滅びた後も揺るぎないものとなった。中国では王朝の交代や信仰の変化によって多くが失われたため、現存する宋元仏画の大半は日本にあると言われている。

 宋や元の時代に高度な文化が発達したのは理由がある。960年に建国し、唐が滅びた後の分裂期を終わらせて中国を統一した宋は、開封に都を置いた前期を「北宋」、臨安に遷都して以降を「南宋」と呼ぶ。官吏登用制度の「科挙」を本格的に運用したことから、優秀な人材が社会を動かすようになり、知性的な文化が栄えた。皇帝直属の宮廷画院には優れた画家が集められ、洗練した表現が磨かれた。また元はモンゴル人によって13世紀に打ち立てられ、国際色豊かな文化が花開いた。

重要文化財「二祖調心図」のうち豊干像 伝石恪筆 中国・南宋時代(13世紀) 東京国立博物館蔵(前期展示)=提供写真

 本展では、そんな環境の中で生み出された名品が並ぶ。国宝「孔雀くじゃく明王像」(仁和寺蔵)は宋時代の仏画の最高傑作とも評される作品。密教で信仰される孔雀明王を珍しい三面六臂ろっぴの姿で精緻に描き、仏の慈悲と厳かさの両面を表現している。

 道教にまつわる作品群も見どころの一つ。重要文化財「蝦蟇鉄拐がまてっかい図」(百萬遍知恩寺蔵)は、道教の一派によって信仰を集めた仙人がどこか人間味あふれるクセの強い姿として描かれる。中国では禅宗と関係が近かったようで、日本でも禅宗寺院などに仙人図が伝わる例が多い。

重要文化財「蝦蟇鉄拐図」顔輝筆 中国・元時代(13~14世紀) 京都・百萬遍知恩寺蔵(前期展示)=提供写真

 宋元仏画はやがて、日本の絵師たちにとって「お手本」のような存在になった。中でも、禅の世界を表現した水墨画や、道教や仏教に関連する人物を描いた「道釈人物画」は自由度が高く、絵師たちを大いに刺激した。

 本展には、感化された日本の巨匠による作品も並ぶ。「蝦蟇鉄拐図」を描いた元時代の画家・顔輝がんきも国内の美術に大きな影響を与えた人物。江戸時代の絵師、曾我蕭白しょうはくによる重要文化財「群仙図屛風びょうぶ」(文化庁蔵)には、顔輝作品を思わせる強烈な個性を持った仙人たちが生き生きと描かれ、忘れがたい印象を残す。

重要文化財「群仙図屏風」(左隻) 曾我蕭白筆 江戸時代 明和元(1764)年 文化庁蔵(前期展示)=提供写真

 多様な魅力で愛され続け、日本文化の根幹に染みこんだ宋元仏画。その世界を存分に味わう機会となりそうだ。

 ◇充実の公式図録 通販も

 公式図録は、出展作品すべてのカラー図版のほか、論文やコラムも多数掲載した、宋元仏画の崇高な世界を堪能できる充実の一冊です。

 会場のほか、通販サイト「まいにち書房」でも、20日午前9時より販売開始します。A4変形判。1冊3000円(税込み、送料別)。

INFORMATION

特別展 宋元仏画—蒼海うみを越えたほとけたち

会 期:9月20日~11月16日(10月19日まで前期、同21日から後期展示)
    前後期以外も、会期中に展示替えがあります。月曜休館(祝日は開館し、翌日休館)
    入館は9~17時(金曜は19時半)
会 場:京都国立博物館 平成知新館(京都市東山区茶屋町、075・525・2473)
観覧料:一般2000(1800)円▽大学生1200(1000)円▽高校生700(500)円▽中学生以下無料。※カッコ内は前売り、20人以上の団体料金
スペシャルチケット(9月19日まで販売):山田章博さんイラストステッカーセット券2000円▽単眼鏡セット券2万円。※販売場所など詳細は展覧会公式ホームページをご確認ください
主 催:京都国立博物館、毎日新聞社、京都新聞
協 賛:DNP大日本印刷、大和ハウス工業

2025年9月18日 毎日新聞・大阪朝刊 掲載

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