<この町を歩いていると、水が歌う子守唄が聞こえてくるような気がしました>(キュンチョメ)
琵琶湖畔にある滋賀県高島市でアートユニット「キュンチョメ」の個展「100万年の子守唄」が開催中だ。滋賀県立美術館が美術館へのアクセスが不便な地域でアートに触れてもらおうと、今年度から始めた企画の第1弾。今回は高島市内の3軒の古民家が会場で、空間を生かした展示も見どころの一つ。個展タイトルには、町を含め、あらゆる生き物を見守ってきた琵琶湖の存在が示唆されている。
キュンチョメは2011年、東日本大震災を機に活動を始めたホンマエリさんとナブチさんによるユニット。人間中心主義を超えた「新しい愛のかたち」をテーマに国内外で制作活動を続けている。
第1会場「つながりの家」は、和菓子店兼住居だった建物。会場奥の台所を舞台とした新作インスタレーション「あいまいな地球に花束を」(25年)は、各地の友人らに描いてもらった世界地図をトレースした青い花瓶に花を飾り、各所に配置した。それぞれの地図はいびつだが、正しいか正しくないかの二項対立ではなく「あいまいなものをあいまいなまま」受け入れることが「愛とか平和につながる、すごく大切なことなんじゃないか」と問いかける。暮らしや商売の痕跡が残る空間自体が作品の一部となっている。

第2会場「治癒の家」と第3会場「祈りの家」はいずれも米蔵だった建物。第2会場の映像作品「Ghost in the Ocean」(25年)は、海中を人形(ひとがた)のビニール袋の切れ端が踊るように舞う。分解されず、自然に還元されないまま、孤独に漂い続けるビニールに今の人間の姿を重ねる。「そんな想像力の先に、地球と私たちの救済があるのではないか」。第3会場では、映像作品「海の中に祈りを溶かす」(22~23年)を鑑賞できる。天井が高く、礼拝堂のような空間が、作品の強度を上げる。
計8作品。4月19日までの金、土、日曜。また、同15日~5月31日、東京都港区虎ノ門の「Gallery&Restaurant舞台裏」で個展も。
2026年3月30日 毎日新聞・東京夕刊 掲載