東京・恵比寿の東京都写真美術館を主会場に「恵比寿映像祭2026」が始まった。国内外の作家が参加。今回はプログラムにサウンドパフォーマンスや演劇を加え、より多角的に社会の変化を見つめる。
総合テーマは「あなたの音に—日花(ジッホエ)聲音(シアーイン)—Polyphonic Voices Bathed in Sunlight」。台湾語を起点に、日本語、英語の三つの言語で構成した。「日花」は木漏れ日、「聲音」は声音や音色を意味する。担当学芸員の邱于瑄(チィウ・ユーシュェン)さんは「それぞれの言語を直訳するのではなく、多様性を尊重しながらも、生じる誤解やずれを問いかけたい」と語る。
鶴巻育子さんの写真作品「ALT(オルト)」シリーズ(2024年)は「見えない、見えづらい人たちはどのように世界を感じているのか」という素朴な疑問から始まった。モニターが映し出すのは、視覚障害者31人のポートレートだ。約4年かけて取材した。視覚障害といっても見えづらさはそれぞれ。壁には、見え方を「言語化」してもらい、鶴巻さんが「写真化」した作品。実際の見え方と言葉、写真にはずれがある。「人と人は理解し合おうとしてもなかなかできない。理解しようとする前に、自分とは違う人がいると知ることが大事という思いを込めた」と鶴巻さん。
アートユニット「キュンチョメ」の映像作品「金魚と海を渡る」(22年)は、美を求められ人工的に品種改良された金魚に、女性の置かれた社会的立場を重ねる。海では生きていけない金魚と人。「二人でなら」と、金魚を入れたポリ袋を手に海を渡る姿は、閉塞(へいそく)感からの逃避行にも映る。「海の中に祈りを溶かす」(22~23年)は、祈りの言葉を唱えながら海に沈んでいくさまをとらえた。聞こえない祈りは、目に見える泡となってぶくぶくと海へ溶けていく。声なき声、音なき音を表現した。

作家たちの多様な表現が響き合う。23日まで。
2026年2月16日 毎日新聞・東京夕刊 掲載