【建築学生ワークショップ】
厳島神社舞台、53人研さん

文:平林由梨(毎日新聞記者)

建築

 全国から公募した建築や環境、美術やデザインを学ぶ学生らが「聖地」とされる場所で建築の提案から制作まで滞在して取り組む「建築学生ワークショップ宮島2022」が世界遺産の厳島神社(広島県廿日市市)で開かれた。造営を繰り返す海上社殿を舞台に、建築のあり方や建築文化をつなぐ方策を模索した。

最優秀賞に選ばれた「うやむや」=NPO法人アートアンドアーキテクトフェスタ提供

 大阪が拠点の建築家、平沼孝啓さんが代表理事を務めるNPO法人アートアンドアーキテクトフェスタが2010年から主催。副代表理事は大阪・関西万博の会場デザインをプロデュースする建築家、藤本壮介さん。15年からは毎年開催され、今回で10回目を迎えた。

 学生53人が10班に分かれ、6月から現地調査を実施。テーマ「〝今、建築の、原初の、聖地から〟 島の未来のために建築ができること」を元にした学生らの提案に、地元で伝統構法に携わる技術者や全国から集まった専門家らがアドバイスした。8月23日からは同地で6泊7日の合宿を行い、境内を中心に10体の小さな建築を完成させた。

 唯一の公開日となった28日には300人超(主催者発表)が厳島神社に集まった。千畳閣では作品を学生らがプレゼンテーションし、同神社の野坂元明宮司をはじめ、前回の開催地・明治神宮の水谷敦憲祢宜(ねぎ)らが見守った。建築家の村上徹氏、美術評論家の建畠晢氏ら24人が審査にあたり、建築ではなじみのないロウを活用した7班の「うやむや」=写真=が最優秀賞に選ばれた。解体後は同神社の背後、弥山(みせん)の「不消霊火堂」で保存する「きえずの火」の燃料に再利用するといい、環境に配慮した計画が評価された。

 優秀賞は階段に吹き抜ける風を可視化しようと試みた4班の「源」、特別賞は波の音を体感する空間を創出した3班の「流」が選ばれた。来年は仁和寺(京都市右京区)を舞台に実施することも発表された。

2022年9月26日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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