2009年秋冬コレクションで披露された「超えて還る、ジャポニズムへ~不失花~」=東京都江東区の東京都現代美術館で2026年5月25日、平本絢子撮影

 世界的ファッションデザイナーとして知られるコシノヒロコさんの過去最大規模の展覧会「(UN)KNOWN HIROKO KOSHINO-新説/真説コシノヒロコ-」が、東京都江東区の東京都現代美術館で開かれている。

 ファッションだけでなく多彩なアート制作でも知られるコシノさん。展覧会タイトルの「(UN)KNOWN」「新説/真説」にあるように、今回の展覧会ではこれまでのイメージを超え、一人の表現者としての姿を浮かび上がらせる。

 「私の人生を垣間見るような目で見ていただけたら面白いと思う」。来年90歳を迎えるコシノさんは記者内覧会のあいさつで、そう力強く語った。「既成概念を捨て、共に展覧会を作り上げた若いスタッフの考えをよく理解し、新しい自分を発見していくことを大事にした」という。

 大阪・岸和田で生まれたコシノさんの原点にあるのは、子どもの頃、祖父に連れられて見た歌舞伎や文楽という伝統文化。金色の山々の間を飛び回る鳥を描いた一辺3㍍超えの大作絵画「WORK#1078 幸せの青い鳥」は、金を基調とした大胆な構成が琳派を思わせ、日本文化の伝統と美意識を体現している。

 ファッションで目を引くのが、2009年秋冬のコレクション「超えて還る、ジャポニズムへ~不失花~」で発表したドレス=写真。直線的で厚みのあるドレスは羽毛布団にインスピレーションを得たといい、ダウンが入った内部を大きな帯で留めている。中央に滝が大きくプリントされた大胆なデザインは、歌舞伎「助六由縁江戸桜」に登場する花魁(おいらん)の帯をモチーフとしており、伝統をモードへと昇華させたコシノさんらしい一着だ。

 世代を超えた新たなコラボレーション作品も展示されている。気鋭のフランス人アーティスト、マティルド・ドゥニーズさんの「Where Stories Linger」は、ドゥニーズさんが自身の絵画を切り刻み、コシノさんのコレクションで使われたアイテムやテキスタイルをつなぎ合わせて、再構成したもの。同じ展示室の壁面に、23~25年にコシノさんが描いた絵画が並ぶ。ドゥニーズさんの繊細な色遣いと、コシノさんの力強く大胆な色彩が対照的でありながらも緩やかに溶け合い、時代と文化、国境を横断した対話が生まれている。

 コシノさんは第一線で活躍しながら次世代の育成にも力を入れており、24年から「こどもファッションプロジェクト」(東京都など主催)の監修を手がける。会場には子どもたちがデザインした洋服など個性の光る作品が並び、未来の表現者への温かいまなざしに触れることができる。26日まで。

2026年7月1日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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