「和田誠の世界Ⅱ」展の会場=多摩美術大学アートアーカイヴセンター提供

 戦後日本のイラストレーションとグラフィックデザインに大きな足跡を残した和田誠さん(1936~2019年)。その学生時代の習作に光を当てた小展示が、母校である多摩美術大学の八王子キャンパス(東京都八王子市)内アートテークで開かれている。

 アートアーカイヴセンター(AAC)の高橋庸平准教授が監修した。若き日の和田さんは、すでにユーモラスで温かみのある作風を発揮。今展示は、巨匠の創作の原点に触れられる貴重な機会だ。

 和田さんが亡くなった後、東京・神宮前の事務所にあった大量の資料が多摩美大に寄贈された。その数約5万点。イラストの原画やポスター、装丁本や蔵書など、2㌧トラック10台分にも上り、現在も整理が進められている。AACはそれらをもとに「和田誠の世界」と題して資料展を企画。今回は、映画をテーマにした初回(23年)に続く2回目となる。

 会場には、魚や鳥を写生してデフォルメした1年次の課題から、カエルのイラストコンクール用習作、卒業制作となった「野上彰 詩集」のブックデザインまで計37件が並んでいる。

 2年次に作った大学祭ポスターや、初めて商業的に印刷されたブリテンのオペラ「ねじの回転」のポスターも注目される。和田さんは後年、井上ひさしさん主宰「こまつ座」や日活名画座などのポスターを多く手がけており、それらの萌芽(ほうが)を見ることができる。

和田さんが制作した多摩美術大学祭のポスター(1956年)=多摩美術大学アートアーカイヴセンター提供

 また、小説『銀の匙』で知られる中勘助の詩「貝殻追放」を元にした絵物語用切り絵も目を引く。アニメーションへの関心は後に「殺人 MURDER!」(64年)に結実した。来場者は、幅広いジャンルに才能を発揮した創作人生のスタート地点を知るだろう。

 5月16日まで(日曜日と1~3日、5、6日休館)。無料。

2026年4月23日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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