川口哩央さんの作品(右手前)と新井碧さんの作品(左奥)の展示風景=山田夢留撮影

 二つ並んだ部屋の一つにはビーズクッションが、もう一つにはベッドが置かれている。クッションを覆っているのは、生理用ナプキン。実際に座ることができ、座ると中から赤い色水がしみ出してナプキンに着色する。ベッドにかけられたグラデーションが美しいシーツには、赤い絵の具が450回染みこませてある。月経の生涯平均回数だという。タブー視されたり、見えないものにされたりしてきた生理が、この部屋では可視化されていて、ドキリとした。そして次の瞬間、なぜ自分はドキリとしたのだろうと考えた。

 「ほどく かさねる きずかれる部屋」展(神戸市)には、5人の女性作家がつくる「部屋」が並ぶ。自分が自分であるために、社会の偏見や差別で負った傷を癒やし、回復する場所としての部屋。本来は自分一人のものである空間を、見る人と共有し、重ね合う展覧会だ。

 企画したのは「ジェンスター運営事務局」。兵庫県立美術館の学芸員、武澤里映さんが同僚と立ち上げたユニットで、造語である「ジェンスター」は「フェミニストと断言する自信はないけどジェンダーに関心があったり、モヤモヤを抱えていたりする人たちの呼び方の提案」だという。本の持ち寄り会やワークショップを開催する中で、参加者が自らの傷について語り出す場面に多く出くわしたことから、本展を構想。これまでの活動で目指してきた「場所をひらく」という考え方を展覧会の作り方にも反映させ、事務局を核に緩やかにつながる作家たちが、月1回の意見交換をしながら準備を重ねた。

 冒頭のクッションは川口哩央(りお)さん、ベッドは新井碧(みどり)さんの作品。山村祥子さんの部屋では「自分の体は誰のものか」という問いが浮かび、前田香奈さんの部屋は母と娘の関係性や「産む/産まない」の選択について考えさせる。浅山美由紀さんは、傷を修復し力を蓄えるシェルターとしての部屋を提示。「KOBE STUDIO Y3」で30日まで。

2025年9月24日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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