童子の姿で表された「不動明王八大童子像のうち阿耨達童子坐像」(右)と「指徳童子立像」などが並ぶ特別展「眷属」の会場=京都市下京区で花澤茂人撮影

 仏教美術の「脇役」にスポットライトを当てる特別展「眷属(けんぞく)」が、龍谷大龍谷ミュージアム(京都市下京区)で開かれている。

 「眷属」とは仏教では「如来」や「菩薩(ぼさつ)」など信仰の対象となる主尊に付き従う存在を指す。インドの神々が仏教に取り込まれた「四天王」や「梵天(ぼんてん)」「帝釈天」などが知られる。

 「主役ではなくても、とてもユニークな姿で魅力的」と語るのは、展示を企画した同館リサーチアシスタントの見学(けんがく)知都世さん。学生時代に京都・三十三間堂に並ぶ国宝・二十八部衆像を研究し、眷属に魅了されたという。

 薬師如来やその信仰者を守るのが十二神将。「12」という数から十二支と結びつき、動物を頭に乗せる姿でも表された。「十二神将立像のうち安底羅(あんてら)大将立像」(鎌倉時代、国宝)は薬師如来を本尊とする奈良・興福寺の東金堂に安置される1体で、間近に見られるのは貴重な機会。かぶとの上の猿のとぼけた表情にも注目したい。

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 神仏と俗世を結ぶ神聖な存在と考えられた童子(子ども)姿の眷属もいる。「不動明王八大童子像のうち阿耨達(あのくた)童子坐像」「指徳(しとく)童子立像」(鎌倉~南北朝時代、国宝)は、仏師・運慶が手がけた和歌山・金剛峯寺所蔵の童子像のうち、後世の補作とされる2体。同館の石川知彦副館長は「運慶像に負けない高いレベルの造形を誇っている」と語る。

 「名も無き眷属」も。明治に廃絶した奈良・内山永久寺の旧蔵と伝わる「四天王眷属立像のうち持国天眷属立像」「増長天眷属立像」(東京国立博物館所蔵、鎌倉時代、重要文化財)は、四天王に従う「眷属の眷属」。中世にさかのぼる彫刻は現存唯一といい、「唇を突き出す表情、つま先が破れた靴など細部までユーモラス」と見学さんは話す。

 眷属たちは「あんな姿やこんな姿で、神仏の手足となり信仰者を助けてくれる」と見学さん。私たちの身近にいる存在なのかもしれない。24日まで。

2024年11月11日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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