船底形天井、雪見障子などがある客室=尾籠章裕撮影

 深い緑の中に旧武者小路実篤邸(東京都調布市)はある。「友情」などで知られる白樺派の作家、実篤は1955(昭和30)年から76年に90歳で亡くなるまでを過ごした。

 一部地下室がある木造平屋建て。外観は周りの自然になじむよう、屋根の勾配を緩やかにした。北側のロビーに面する玄関の靴脱ぎ場には、美しい丸石が規則的に18個並ぶ。和の中に洗練されたモダンの要素を感じる。

玄関の靴脱ぎ場には丸石が規則的に並ぶ=尾籠章裕撮影

 ロビーを基点に南、西側が仕事、来客を迎える空間、東側が居住空間となっている。ロビーから居住スペースへは段差を設けて空間を分けた。

 仕事部屋の片隅の小さな文机で原稿を書いた。実篤が使用した眼鏡が置かれている。この部屋で淡彩画にも取り組んだ。客室は親しい来客を通した。船底形天井と下半分がガラスの雪見障子により、室内に広がりをもたらしている。

原稿を書く際使用していた仕事部屋の文机。眼鏡とともに残る=尾籠章裕撮影

 建築の際、「日の光の中で仕事をしたい。明るい家に」と要望したという。建物南側に大きな窓を配している。妻の安子と2人で暮らした邸宅には、晩年の穏やかな生活の日々の跡が色濃く残る。

2026年9月20日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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