国の重要文化財に指定されている駅舎が国内に三つある。東京駅丸ノ内、北九州市の門司港駅、島根県出雲市の旧大社駅の各本屋だ。
大社駅は1912(明治45)年、旧国鉄大社線の開通に合わせて開業。出雲大社の表玄関としてにぎわい、24(大正13)年に現存する2代目が完成した。設計は神戸鉄道管理局技手の丹羽三雄。出雲大社神苑の整備設計に携わっていた建築家・伊東忠太の助言があったとされる。

大社線は90年、自動車の普及などによる採算悪化で廃線となり、駅舎は2004年、国重文に指定。西洋建築の東京駅、門司港駅に対し、近代和風建築は大社駅のみで、「和風駅舎の最高傑作」とされる。市が20~25年、約12億5000万円をかけて保存修理と耐震化工事を実施。今年4月、旧大社駅として再オープンした。

左右対称の屋根に黒瓦を載せ、中央は破風、棟の両端は鴟尾(しび)で飾り重厚感を演出。柱のない広々とした3等待合室と旧出札室が往時をしのばせる。ホームから出雲大社の一の鳥居が遠望できる。列車を降りた参拝客の高揚感を想像してみた。
2026年9月13日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載