白壁が連なる旧萩藩(山口県萩市)の城下町。国の指定重要文化財「菊屋家住宅」の長屋門をくぐると一般の商家にはない大式台を備えた玄関がある。
「菊屋」は旧萩藩の御用商人として栄えた豪商で藩主が度々訪れた。幕府の役人の本陣としても使われ藩の迎賓館の役割も担った。本来、上級武家屋敷のみに作ることを許された長屋門や格式の高い玄関があるのはこのためだ。
庭の駕籠(かご)置石から飛び石伝いに数歩で上がれるようになっている書院は家人が使用することのない建物だった。
主屋は1650年代に建てられたと推定され、江戸初期の通り土間型の町家の原形をとどめている。釜場や置き屋根式土蔵造りの米蔵、本蔵、金蔵など屋敷全体が残存するのは大変貴重で、それらが国の重要文化財に指定されている。
「電話室」の中には電話が開通した当時のレトロな電話機が残る。古い柱時計が目に留まった。伊藤博文の米国土産だそうだ。所蔵する美術品も多数展示されている。まるで博物館だった。


2026年9月6日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載