レトロ建築が多く残る大阪市中央区の船場地区に原田産業大阪本社ビルはある。1928(昭和3)年に建設され、2021年に国の登録有形文化財になった。設計は戦前の官庁の鉄道院で赤レンガの東京駅の設計にも携わった近代建築家の小笠原祥光である。
鉄筋コンクリート造りの2階建てで、特徴的なのは正面外観だ。アーチ形の玄関を向かって右側に、中央左側には開放的な大ガラス窓を配置。アールデコ調の重厚なたたずまいでありながら、あえて左右対称を崩した意匠となっている。内部には吹き抜け空間に曲線を描く階段を配置し、床にはさまざまな色の大理石のモザイクタイルが張られている。

原田産業は多角的な事業を展開する総合貿易商社で1923年に創業した。関東大震災の惨状を見て地震や火災に強い建築にし、大阪大空襲でも大きな被害を免れた。当時の特徴を残しながら現在も改修を重ねて本社ビルとして現役を保つ。年1回特別公開などもされており、地域の人からも愛されている。

2026年8月9日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載