逆円すい台を重ねた片方だけの柱(玄関右)や2階の窓台、屋上に建つ観測塔が目を引く=佐藤賢二郎撮影

 原爆の惨禍を今に伝える被爆建物。広島市では86件が登録され、一部は今も一般公開されている。そのひとつが柳田邦男氏のノンフィクションの名作「空白の天気図」の舞台にもなった広島市江波山気象館(旧広島地方気象台)だ。

 市の南部にある標高約30㍍の江波山はサクラの名所として知られ、春は花見客でにぎわう。

 1934年、県立広島測候所の新庁舎として山頂に建設され、43年に広島地方気象台と改称された。設計は広島県営繕課の伊達三郎技手。アールデコや20世紀初頭にドイツで流行した表現主義の影響を受け、幾何学的なデザインや丸みを帯びたスタイルに特徴がある。

 45年8月6日、原爆投下。爆心地から約3・7㌔離れていたが、爆風で窓枠が変形し、飛散したガラス片などで職員25人全員が負傷した。

 戦後も修復して利用され、内外装ともにほぼ当時のまま。被爆の痕跡も保存され、92年に天気や気象がテーマの博物館に生まれ変わった。

 屋上から広島市中心部を望む。81年前、どんな光景が広がっていたのか。当時と同じ建物が臨場感を高める。

人造石を研ぎ出して仕上げられた床面=佐藤賢二郎撮影
ステンドグラスが美しい玄関ホールの受け付け窓=佐藤賢二郎撮影

2026年7月5日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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