京都工芸繊維大(京都市左京区)の3号館は、1930(昭和5)年に前身である京都高等工芸学校が現在のキャンパスに移転した際に建設され、2008年に国の登録有形文化財に指定された。設計は大正期から昭和初期にかけて京都を中心に活躍したモダニズム建築の先駆者であり、同校の教授だった本野精吾である。
同館は鉄筋コンクリート造りの3階建てで、幅約60㍍、奥行きは約100㍍、内側に二つの中庭を持つ「ヨ」の字形構造。表面をくし引きした茶色のスクラッチタイルで全面が覆われ、北面・南面には張り出した連続するガラス窓と、現代建築を先取りしていた。しかし、正面玄関内のエントランスホールから続く左右対称の中央階段は、重厚な石造り建築の名残をとどめており、モダニズムへの過渡期を感じさせる。

どこか懐かしい風情も漂わせる3号館は、大学のシンボル的な存在となっており、学生・教職員から世代を超えて親しまれている。また、レトロな雰囲気が古い警察署や官公庁をイメージさせるとしてドラマの撮影に使われることも多いという。

2026年6月14日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載