旧呉鎮守府司令長官官舎洋館部の客室。壁は復元された金唐紙で覆われている=佐藤賢二郎撮影

 戦艦大和を生んだ海軍の街で、アニメ映画「この世界の片隅に」の舞台としても知られる広島・呉。往時を今に伝える建物のひとつが、入船山公園にある旧呉鎮守府司令長官官舎だ。

 小さな港町だった呉に海軍の拠点、鎮守府が置かれたのは1889年。翌年、軍政会議所と将校の親睦施設を兼ねた洋風木造2階建てが建てられた。92年から長官官舎として利用されたが、1905年の芸予地震で倒壊。廃材を利用した木造平屋で再建された。設計は英国で建築を学んだ桜井小太郎。戦後は連合国軍司令官の官舎として使われた。老朽化に伴い、91年から再建時の資料を基に調査修復された。

 当時の姿が復元された現行の建物は、公務用の洋館部と私的利用の和館部で構成される。洋館部の外観は英国風のハーフティンバー様式を採用。屋根には天然スレートがふかれている。壁紙には国内でも珍しい金唐紙が使われていたが、戦後、白ペンキで塗られていたため、調査で発見された模様を基に忠実に再現された。98年に、国の重要文化財に指定された。

洋館部の正面玄関。天然スレートがふかれた屋根は魚のうろこのようだ=佐藤賢二郎撮影
客室内に展示されている、復元された金唐紙「草花と昆虫」屛風(びょうぶ)=佐藤賢二郎撮影

2026年5月24日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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