白を基調とした鉄骨造の総ガラス張りで、光あふれる名古屋市東山植物園温室前館(同市千種区)。建設当時に「東洋一の水晶宮」とたたえられた国内現存最古の公共温室は、戦前からさまざまな緑を育み、市民の憩いの地となってきた。
地元有力企業の寄付により植物園が整備された一環で、温室は1936年に完工。名古屋市土木部建築課の一円俊郎が設計し、シンメトリー(左右対称)なデザインの内部は、多肉植物室や中央ヤシ室など、コンセプトに沿って植物が配置されている。
日本最初期の全溶接建築物として技術史上でも高く評価されるなど、2006年に国重要文化財の指定を受けた。
13年から20年まで行われた保存修理では、構造補強のみならず、開園時の姿への復元工事も実施。当初の部品や古写真を分析し、手動窓開閉装置などが再現された。

太平洋戦争末期の空襲による被害や職員の出征などで存続が危ぶまれることもあったが、職員らの草花への愛情を礎に名建築は今に生き続けている。

2026年5月17日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載