日本海を望む高台に「旧青山別邸」(北海道小樽市)は建つ。明治から大正にかけニシン漁で富を築いた青山政吉と娘の政恵が、客人をもてなすために建設した別荘。当時の栄華を象徴する「ニシン御殿」の一つだ。
1923(大正12)年完成。青山本家があった山形県から宮大工ら職人約50人を集め、6年半かけて作り上げた。母屋、離れ、文書蔵で構成され、全国の銘木を惜しげもなく使用。「新宿中村屋」のロゴで知られる中村不折ら著名な芸術家の作品もあり、格調高い空間を演出する。

現在のオーナー、佐藤美智夫さん(80)が約40年前、空き家になっていたこの別邸を購入し、完成当時の姿に忠実に修復した。89年から一般公開し、2010年には国登録有形文化財に指定された。人気漫画「ゴールデンカムイ」(野田サトル・集英社)にも描かれた。
佐藤さんは「北海道の歴史を物語る文化財。ここに残すという使命感を持っています」と話す。建物内外を毎日巡回して破損の有無を確認するなどして、保存に尽力している。

2026年3月15日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載