柔らかな光が差し込む大閲覧室=梅田麻衣子撮影

 神戸大学には九つの図書館がある。その最古の建物が社会科学系図書館(神戸市灘区)だ。港町・神戸の市街を一望できる六甲台キャンパスにあり、1933年に建てられた。蔵書数は約142万冊に及ぶ「知の宝庫」だ。

 外観は淡い黄色のタイル張り。玄関ホールは開放的な吹き抜け階段が広がる。階段を上がりきると、正面にはメインカウンターと、神戸高商(現神戸大)OBの洋画家、中山正実の壁画「青春」が来館者を迎える。

壁画と以前使用されていたメインカウンター=梅田麻衣子撮影

 本館2階にある「大閲覧室」も創建当時の姿を残している。アーチ形の天井には天窓があり、はめ込まれたステンドグラスから柔らかな光が差し込む。木製の大型机20台が並び、これらは開館当初から使われている。重厚で歴史の重みを感じさせ、新入生などは映画「ハリー・ポッター」の世界のようだと驚くという。

 戦禍を逃れ、95年の阪神大震災でも建物に大きな被害はなかった。2003年、本館の2階建て部分などが国の登録有形文化財となった。モダニズム建築の雰囲気を、現在に伝えている。

創建当時から使用されている書庫の階段がある=梅田麻衣子撮影

2025年11月2日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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