増築部分の「円形図書館」。焦げ茶色の塩焼きタイルが張られている=小関勉撮影

 関西大学千里山キャンパス(大阪府吹田市)の「簡文館」は、キャンパス内で唯一、戦前から残る建築物だ。中国の古典「中庸」から名付けられ、「旧図書館」と「円形図書館」で構成されている。新旧部分の対比が際立つものの両者が調和し、一体感を醸し出している。

 旧図書館部分は、大学昇格5年を記念して1928(昭和3)年に完成した。荘厳なゴシック様式が特徴で、外壁には白色モルタルが使われている。とがった塔の形を模した装飾用の柱の間に縦長の窓が並ぶ。円形図書館部分は、55(昭和30)年に増築された。設計はモダニズム建築を代表する村野藤吾による。白色の柱の間に焦げ茶色の「塩焼きタイル」が張られている。3階建ての中央部にらせん階段を設け、最上階は円形天井にある多数の天窓が目を引く。

「旧図書館」は外壁に白色モルタルを用いている=小関勉撮影

 同大キャンパスは戦時中、軍に接収され旧図書館も閉鎖するなどして一時荒廃。戦後復興で図書館利用者の増加もあり、円形部分が増築された。2018年に府指定有形文化財になり、現在は博物館として一般公開されている。

「円形図書館」部分の最上階は、現在は博物館常設展示室となっている=小関勉撮影

2025年10月19日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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