一般向けの開架室は開放感ある空間が広がる=尾籠章裕撮影

 閑静な住宅街に、箱形をしたシンプルな建物が姿を現す。東京都日野市の市立中央図書館だ。

 地上2階、地下1階建てで、1973(昭和48)年に完成した。設計を担当したのは建築家の鬼頭梓。モダニズム建築の旗手、前川國男の事務所に勤務し、その後独立。公共図書館や大学図書館を数多く手がけた。

 斜面の上に建ち、南側には澄み切った湧き水が流れている。鉄筋コンクリート造りだが外観はタイルではなく、本物のレンガを積み重ねて仕上げた。レンガ一つ一つの風合いが異なり「歳月を経るにつけ美しくなる」というコンセプトが感じられる。

南西から見た建物外観=尾籠章裕撮影

 1階部分はL字形で、玄関を入って右が児童向け、正面が一般向けの開架室になる。一般向けの開架室は吹き抜けになっていて天井高は約7・5㍍。大きな窓越しから、庭の緑がのぞく。

 書架の間隔は広く取られているため圧迫感がなく選びやすい。時間をかけてじっくり書籍と向き合う環境になっている。完成時の姿をほぼ今に残しているのも、市民に親しまれ続ける理由だろう。

2階の階段ホールは天窓から日差しが壁に反射する=尾籠章裕撮影

2025年10月12日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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