
広島市の中心部にある比治山。市内を一望できる標高約70㍍の小高い丘で、比治山ホールはここに建っている。
鉄筋コンクリート造りの2階建てで、1953(昭和28)年に完成。終戦後に米国が設置した原爆傷害調査委員会(ABCC)の職員宿舎として用いられた。設計はモダニズム建築の旗手、前川国男。丹下健三の原爆資料館、村野藤吾の世界平和記念聖堂と並び、戦後の広島市の三大建築とされる。
外観は、前面にガラス窓を多用した大開口部などが特徴。内装では1階ホールのつり階段が目を引く。各居室内にも機能性を重視した前川らしい構成美が残る。

ABCCは75年に放射線影響研究所(放影研)に改組され、その後も比治山ホールは宿舎として使われた。だが老朽化が進むなどして数年前から居住者はいない。
放影研は同市内の広島大学霞キャンパスに移転予定で、比治山ホールも今後の活用方法が議論されている。

2025年6月22日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載