南西方面から見上げた建物外観。内部も見られる見学会の開催は未定=4月、佐藤賢二郎撮影

【レトロの美】
比治山ホール 広島市
米の原爆調査委宿舎

文:佐藤賢二郎(毎日新聞記者)

建築

 広島市の中心部にある比治山。市内を一望できる標高約70㍍の小高い丘で、比治山ホールはここに建っている。

 鉄筋コンクリート造りの2階建てで、1953(昭和28)年に完成。終戦後に米国が設置した原爆傷害調査委員会(ABCC)の職員宿舎として用いられた。設計はモダニズム建築の旗手、前川国男。丹下健三の原爆資料館、村野藤吾の世界平和記念聖堂と並び、戦後の広島市の三大建築とされる。

 外観は、前面にガラス窓を多用した大開口部などが特徴。内装では1階ホールのつり階段が目を引く。各居室内にも機能性を重視した前川らしい構成美が残る。

1階にあるらせん状のつり階段=4月、佐藤賢二郎撮影

 ABCCは75年に放射線影響研究所(放影研)に改組され、その後も比治山ホールは宿舎として使われた。だが老朽化が進むなどして数年前から居住者はいない。

 放影研は同市内の広島大学霞キャンパスに移転予定で、比治山ホールも今後の活用方法が議論されている。

1階には、洗面台が専用の扉で隠れるように作られている部屋もある=4月、佐藤賢二郎撮影

2025年6月22日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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