ドーナツ形の回廊が広がる「三層楼」と呼ばれる擬洋風建築の建物=竹内幹撮影

 山形市市街地のほぼ中央にある山形城跡「霞城かじょう公園」。新緑に囲まれた公園内の片隅に「山形市郷土館(旧済生館本館)」がある。

霞城公園内にある郷土館の正面=竹内幹撮影

 幕末から明治初期にかけて、近代化を意識した日本の職人が欧米建築をまねた「擬洋風建築」のひとつ。1878(明治11)年、初代山形県令の三島通庸みちつねにより病院として建設された。

 木造4階建てだが、外観は3層に見える構造で、「三層楼」と呼ばれる。十四角形というドーナツ形の回廊があり、その回廊に沿うように、八つの部屋が並ぶ。瓦屋根やステンドグラスが施され、軒や柱の装飾など日本と西洋の建築技術が融合したユニークな様相だ。館内では江戸時代の医学書や、院内で使われた貴重な医療機器などを展示している。

 1966年に国重要文化財に指定され、後に霞城公園内に移築。71年に市郷土館として再出発した。2024年度の来館者数は訪日客の増加もあり4万2000人を超え、過去最多を記録。今なお、色あせぬ魅力を放ち続けている。

らせん階段に、やわらかな光が注ぐ=竹内幹撮影

2025年6月15日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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