
古くから商業港として栄えた四日市港は現在、工業地帯の様相を呈し多くの船舶が行き交う。その発展を長く見守ってきたのが、現役として日本最古の鉄道可動橋、末広橋梁(三重県四日市市)だ。1931(昭和6)年に建設された当時の姿のまま、今もその「任務」を果たしている。
末広橋梁は伊勢湾に注ぐ千歳運河に架かり、全長58㍍、橋脚上の門型鉄柱の高さは15㍍に及ぶ。船舶が通過する際、鉄柱上部のケーブルがウインチで巻き上げられ、中央部の16㍍の桁が跳ね上がる。
設計はアメリカで橋脚設計を学んだ山本卯太郎。陸上輸送と河川舟運が拮抗していた時代を今に伝える建造物として、98年に国指定重要文化財になった。

通常、橋桁は約80度の角度で跳ね上がったまま。それが下りてくるのは1日5回で、港内の工場へセメントを運ぶ列車が通過するときだ。定時になると係員が自転車で操作室へ駆けつける姿も昔と変わらず、鉄道ファンの心をつかんで離さない。

2025年6月8日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載