
熊本県八代市の日奈久温泉街にある旅館「金波楼(きんぱろう)」は、寄せ棟や切り妻造りの屋根が複雑に組み合わされている。
木造3階建てで、本館は1909(明治42)年に建てられた。各階にはひさしが設けられ、また外観は大きなガラス窓で覆われていて開放感がある。「金波楼」の名称は、3階から八代海の夕日を望むと波が金色に見えたためつけられた。温泉街では3階建ての旅館が多かったがその中でも最大級の規模だった。

玄関を入ると、客室へ続く大きな階段が目に入る。総じて純和風だが、階段の手すりだけ洋風の意匠が施されている。床は建築以降、長い間磨き上げられ、落ち着いた風情を感じさせる。
入り口にある土間や洗面所の床には有田焼のタイルがちりばめられ、ぜいたくな雰囲気を醸し出す。また旅館によると、東側の棟は近くの旅館を買収した際に「引っ張ってきてつないだ」というから驚く。
2009年、国の登録有形文化財に認定され、現在も宿泊客や日帰り入浴客でにぎわっている

2025年4月6日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載