独創的なフォルムと豊かなディテールが特徴の東ウイング外観の一部=村田貴司撮影

 六甲の山並みを望む兵庫県西宮市内に、時代を超えて愛されている建物がある。武庫川女子大学甲子園会館(旧甲子園ホテル)は、米国の建築家、フランク・ロイド・ライトの愛弟子・遠藤新(あらた)が設計した。かつては「東の帝国ホテル、西の甲子園ホテル」と称された。

 1930年に完成し、ホテルとしては14年間、皇族や政財界人らの社交場としてにぎわった。日米野球で来日したベーブ・ルースも宿泊したと伝わる。戦時中に海軍病院として接収され、戦後は進駐軍の将校宿舎に転用された。65年に国から譲渡されて同大の施設になった。

 起伏に富んだ独創的なフォルムの洋式建築。屋根には緑釉瓦(りょくゆうがわら)、打ち出の小づちのレリーフなど、和の要素を巧みに取り入れ、「阪神間モダニズム」の代表的建築物と言われる。ロビーにはシェル(貝殻)形の照明がつるされ、重厚ながらくつろいだ雰囲気を醸す。1階西ホールはかつて舞踏会が開かれていたといい、当時の華やぎを今に伝えている。歴史を伝える生きた教材として、建築を学ぶ学生の感性を磨く場となっている。

市松格子の光天井が特徴の1階西ホール=村田貴司撮影
かつてバーだった空間に残る暖炉とモザイク床タイル=村田貴司撮影

2025年3月23日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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